東武鉄道の体質を問う

2005/12/06

 東京足立区にある東武鉄道の踏切で4人が死傷した踏切事故について、友人が送ってくれた文章を、当ページで公開してもよいと、承諾をもらったのが8月。承諾してもらったのに4ヶ月も放置するなぞ、まったく許し難い行為にあきれもせず、少し前には、また東武で起きた、自分の子供を運転室に入れた運転士が問答無用で懲戒免職となった件でもメールを送ってくれましたので、合わせて、「東武鉄道の体質を問う」として公開いたします。

竹ノ塚踏切事故の責任は会社にこそある

京都・百合隆久 

 春闘期間中の3月15日の夕方、東京都足立区の東武伊勢崎線・竹ノ塚駅の手動式踏切で、通行人4人が死傷する事故が発生した。警視庁は踏切保安掛の組合員を逮捕、東京地検は業務上過失致死傷で起訴した。警察と検察は「犯人探し」→逮捕→起訴し、「一件落着」といったところか。しかし、我々労働者は、安全対策をまともにやらずに、個人の責任追及で終わらせる、資本の「いつもの手口」を許してはならない。
 この竹ノ塚駅踏切には、東武伊勢崎線の複々線が通り、1時間近く閉まったままの「開かずの踏切」だった。手動式の有人踏切で、自動ロックを解除したことで事故は起こってしまった。1時間近くも踏切が閉まったままだと、通行人はイライラする。「早くあけろと」せかされ。脅されることもあり、酔っ払いから、詰所を蹴飛ばされることもあるという。「身の危険」を感じながら働いていた。また。地元の商店街や自治会からは高架化の要求が何度も出ていたにも関わらず、会社は多額の工事費用がかかるため、放置していた。私は郵便局で配達の仕事をしている。配達エリアには、叡山電車の踏切が、たくさんある。バイクでの配達中、踏切に引っかかると、イライラするし、「何で早い目に閉めるんや!」、「いっそのこと、叡電は高架にしたらエエのに!(するわけがないが)」と思うこともよくある。
 さて、72年、国鉄総武線船橋駅で、追突事故が発生し、高石運転士がその場で逮捕された。そして、起訴された。彼が所属する動労千葉地本(現動労千葉)は、事故は合理化の結果で、高石運転士に何の責任もないと闘った。総武線は過密ダイヤで問題になっていた。また、絶対に止まらなければいけない、場内信号と出発信号の間に、信号をいっぱいつくっていた。場内信号と出発信号の間に、信号をつくることは、動いていいことになってしまう。そこへ、埼玉の蕨市からの送電線が腐食して停電。信号機も停電した。atsは鳴りっぱなしとなる。当時、「atsが鳴ったら一旦止まって走れ」との指導が出ていた。その指導の下で追突事故は起こった。そして、船橋事故闘争は始まった。数波にわたるスト、何十波にわたる順法闘争を展開。また、裁判には動員数の倍の組合員が、毎回傍聴参加した。結果、裁判は執行猶予付きの禁固刑で負けたが、高石さんは、運転士としての復職を獲得した。(動労千葉ホームページより)
ところで、東武交通労組は、春闘の横断幕、ワッペン、分会旗、掲示物を撤去し、春闘交渉さえ中断してしまったようだ。、春闘を中断するのではなく、踏切保安掛の組合員を、守り抜く闘いへと発展させるべきだ。上部機関の私鉄総連も、春闘と安全問題を産別として、取り組むべきだ。
 なお、高石氏はJR移行時、国労や建交労(全動労)と同じく、分割民営に反対した動労千葉組合員であることにより、採用を拒否され、清算事業団からも解雇された1,047名の一人で、現在は動労千葉争議団として、鉄道運輸機構訴訟の原告だそうです。

「長男を運転台に入れて懲戒解雇」は解雇権の乱用だ

京都・百合隆久 

 11月1日、東武鉄道野田線に於いて、30代運転士が、長男を運転台に乗せて運転したことに対し、会社は「重大な含む規定違反」として、運転士を懲戒解雇するとした。当日は、本人の連れ合いさんと3才の長男が、先頭車に乗車したところ、長男が騒ぎ、運転席のドアを叩くなどした。そのため、運転士は、なだめようと、南桜井駅で停車中に、運転席のドアを開けたところ、長男が運転席に入り込んでしまい、そのまま次の川間駅まで走らせたという。勿論、「立入許可証」を持たない者を、運転席に入れたのは問題だ。しかし、これがはたして、懲戒解雇に該当するだろうか?「下車勤」(乗務を降ろされる)や「日勤教育」はあるかもしれないが、明らかに、解雇権の乱用である。小生は「下車勤」や「日勤教育」を肯定する気はない。
 また、JR東日本千葉支社では、乗務中の運転士が、携帯電話を使用したとして、JR総連東労組所属の青年労働者を解雇した。JR千葉支社は、「無線は走行中に受けろ!」と指示を出していた。無線も携帯も、走行中に使用すると、前方を注視出来なくなり、安全確保が出来ない、という点では、全く同じだ。尼崎の事故のあと、動労千葉では、「無理な回復運転はしない」、「無線は停車中に受ける」等の安全闘争を行った。それに対して、JR東日本と千葉支社は動労千葉の本部役員に、「運行管理権の妨害」として処分を出すというデタラメなことをやった。
 さて、今回、東武もJR東日本も、労働者の生活の糧を、解雇権の乱用により、いとも簡単に奪ったのである。JR総連東労組には、何も求めることは出来ない。しかし、東武鉄道の事案に於いては、東武交通労組と私鉄総連は、「解雇権の乱用だ!」として、闘い、組合員を守るべきだ。
 翌日から、東武本社には、抗議の電話やメールが殺到。当該の運転士は自宅謹慎中。しかし、会社側は解雇を撤回しないという。東武鉄道に抗議行動を!